ギリシャ議会、財政緊縮策を可決—デフォルト回避へ前進
2011年 6月 30日 5:41 JST jp.wsj.com
【アテネ】ギリシャ議会は29日、国際金融支援の獲得に必要な5カ年財政緊縮計画を可決した。一方、議会周辺に集まった数千人のデモ隊は厳しい緊縮策に抗議し、警官隊と一部無政府主義の若者グループとの間で衝突が続いている。
ギリシャがデフォルト(債務不履行)回避のために必要な新たな融資を得るには、284億ユーロ(約3兆3200億円)の赤字削減や増税などを盛り込んだ財政改革法案を国会で成立させることが条件となっていた。
財政緊縮策の成立に向け議員の説得を続けてきたパパンドレウ首相は胸をなで下ろした。同首相は投票の直前に、
「国の崩壊を回避するために必要なことは全てやらないといけない」
と発言。
同首相は以前、法案が可決されなければギリシャの資金は底をつく恐れがあり、「プランB(代替案)」はなく、ギリシャは国外の債権者によって「売り払われる」ことになると警告していた。
緊縮策の承認を期待し午前中から上昇していた株式相場は、可決後上げ幅を拡大した。午後の取引でStoxx欧州600指数は前日比1.5%高の269.26ポイント、英FTSE指数は1.38%高の5846.28ポイントとなっている。
ギリシャの緊縮措置遂行で当面は問題の波及リスクが低下するとの見方から、スペインやポルトガルなど周辺国国債の「リスクフリー」とされるドイツ国債に対するプレミアムも縮小した。29日のスペイン国債利回りは5.55%となり、27日の5.7%から低下した。
しかし、翌30日には個別の緊縮措置の関連法案の採決が控えていることもあり、支援融資を受けている国のソブリン債相場の上昇はみられなかった。ロンドンのトレーダーは、
「投資家は今日の法案可決の意味合いを理解しようとしており、今後まだニュースは続く」
と述べた。
関連法案には500億ユーロ規模の民営化計画も含まれるが、緊縮策の基本法案が承認されたことで、30日の採決は形式的なものになるとの見方もある。
最大野党の新民主主義党も、緊縮計画に含まれる増税には反対しているものの、民営化や歳出削減の措置は支持しており、法案可決に向けて協力する考えを明らかにしている。
一方、緊縮策に対する国民の反発は根強く、28日にはギリシャ全土で同計画に反対する48時間のゼネストが開始された。首都アテネでは緊縮策に抗議する1万人規模のデモ隊が議事堂前のシンタグマ広場に集結したが、デモは総じて平和的に行われている。
しかし、一部の暴徒化した若者グループが石などを投げて警官隊と衝突したため、付近の高級ホテル「キング・ジョージ・パレス」の宿泊客などが避難を強いられた。
債務危機に陥っているギリシャは昨年5月に、1100億ユーロの国際金融支援を受けてデフォルトをかろうじて回避したが、国際金融市場での資金調達は高コストから困難な状態となっている。
同国は現在、欧州連合(EU)ならびに国際通貨基金(IMF)に対し約1000億ユーロの新たな支援を求めているが、EU・IMFは見返りに財政緊縮計画の議会承認と民営化計画の実施を要求している。
ギリシャは7月中旬には資金繰り難に陥る見通しで、その前に現行の金融支援枠からの新たな供与を求めている。それを承認するかどうかを決めるユーロ圏財務相会合は、ギリシャ議会の採決を見極めた上で7月3日に開かれることになっている。
記者: Alkman Granitsas and Marcus Walker and Sara Schaefer Muñoz