「席順」「発言順」の運も良かった! 安倍首相がG7「ウクライナ危機」首脳会議で欧米諸国から高評価
2014年03月29日(土) 歳川 隆雄 gendai.ismedia.jp
「運も実力のうち」とよく言われるが、安倍晋三首相は、本当に強運の持ち主である――。
安倍首相は最後から二人目に発言できた
3月24~25日、オランダのハーグで核安全保障サミットが開催された。期間中の24日午後(日本時間25日未明)、ウクライナ危機への対応を話し合うため主要7ヵ国(G7)緊急首脳会議でのことだ。
米国のオバマ大統領、英国のキャメロン首相、フランスのオランド大統領、ドイツのメルケル首相、カナダのハーパー首相、イタリアのレンツィ首相、欧州委員会のバローゾ委員長、欧州理事会のファン=ロンパイ議長、そして安倍首相の9人だ。
各国首脳は丸テーブルを囲み、各人のバックシートには各国2人が控えた。
因みにオバマ大統領のバックシートに座ったのは、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官で異彩を放った。というのも、他国はシェルパと呼ばれる各首脳の個人代表とPDと称される政治担当外務次官が通常のラインナップであるからだ。
安倍首相の後ろに控えたのは、シェルパの長嶺安政外務審議官(経済担当・1977年入省)とPDの杉山晋輔外務審議官(政治担当・同)であった。
先ず、オバマ大統領が口火を切り、ロシアによるクリミア半島編入を強く批判、今年の6月にロシアのソチで開催予定のG8首脳会議ボイコットを呼びかけた。
そしてテーブルに座る各首脳に対し時計と逆回りで順番に発言するよう求めたのだ。
右隣に座ったキャメロン首相からオランド大統領 → ハーパー首相 → バローゾ委員長 → ファン=ロンパイ議長 → レンツィ首相 → 安倍首相 → メルケル首相ということだ。
安倍首相が発言するまでの各首脳は異口同音にクリミア編入がいかにEU(欧州連合)加盟各国のみならず欧州全域に脅威を与えることになるかを熱く説いた。
特にキャメロン、ハーパー両首相のロシア=プーチン大統領批判は激烈なものだったという。
「という」というのは、同緊急首脳会談は完全非公開であり、各国代表団に対して発言内容漏れに関する厳しい縛りがかけられたからだ。
つまり、各首脳の発言順番もトップシークレットなのだ。
想定問答集は不必要だった
さて、安倍首相である。発言の冒頭、武力によるクリミア半島編入は欧州諸国だけではなく日本や東南アジア諸国にとって対岸の火事として済まされない重大な問題であると提起したというのだ。中国を念頭に置いた発言であったことは指摘するまでもない。
この安倍発言を受けてメルケル首相は
「まさに安倍首相の言われるとおりである。アジアに関わる視点を忘れてはならない。ロシアが今後、中国と手を握る可能性がある」
といった趣旨の発言をしたという。
安倍首相の手元には、もちろん「想定問答集」が用意されていた。が、殆ど使わなかったという。
即ち、各首脳の発言(オランド大統領はフランス語、メルケル首相はドイツ語、そして安倍首相は日本語で他の首脳はすべて英語)をきちんと咀嚼したうえで、自分の番に回ってきたらどう発言すればどのように受け止められるかを素早く頭の中で計算してから発言したようだ。
これまで、歴代の首相は用意されたペーパー(想定問答集)を読み上げるだけであった。
オランダのウィレム=アレクサンダー国王主催の夕食会やバイの各国首脳との会談の合間などでは、安倍首相は通訳なしで懇談する場面があったとも聞く。
従って、6月の次期G7首脳会議(ベルギーのブリュッセルで開催)から安倍首相の存在感が高まることは確実だ。
今秋に退任するバローゾEU委員長とファン=ロンパイEU理事会議長の後任は未定だが、現在の欧米諸国のネーションリーダーたちの「安倍評価」はかなり高い。
がしかし、正念場はこれからだ。プーチン大統領の今後の出方が読めないのだ。
欧米諸国と足並みそろえて対処すれば良いという問題ではない。
日本の対露外交が他国のアプローチと異なっていて当然である。
日露間には北方領土問題があり、尖閣諸島を抱える対中政策ともリンクしてくる。次の顔合わせで、安倍首相はいかにウクライナ危機に立ち向かうのか。