2014年08月

防衛庁長官時代から自衛隊を“軽侮”していた加藤紘一氏
 
2014.8.29 12:59  産経
 
 初代内閣安全保障室長、佐々淳行氏の新著「私を通りすぎた政治家たち」(文芸春秋)が面白い。
 
第2章「国益を損なう政治家たち」を読むと、
 
田中角栄、
三木武夫両元首相や生活の党の
小沢一郎代表
 
ら大物政治家がけちょんけちょんにやっつけられている。
 
 特に、佐々氏が防衛施設庁長官として仕えた自民党の加藤紘一防衛庁長官(当時)に対する評価は辛辣そのものである。
 
本書によれば、加藤氏は長官として迎えた最初の参事官会議で無神経にもこう言い放った。
 
 「若いころマルクス・レーニンにかぶれないのは頭が悪い人です」
 
 会議に出席していた佐々氏をはじめ統合幕僚会議議長、陸海空の各幕僚長も背広組も、みんな共産主義には縁遠い人ばかりだったのに、である。
 
佐々氏らは会議後、
 
「私たちは若いころに頭が悪かったんですな」
 
と顔を見合わせたという。
 
 加藤氏が陸上自衛隊第1空挺団の行事「降下訓練初め」に列席した際のエピソードも出てくる。
 
寒空の下、上半身裸になった隊員が、長官を肩車で担いで練り歩く恒例の歓迎を受けた加藤氏は防衛庁に戻ると、こんな不快感を示した。
 
 「日本にも、まだあんな野蛮なのがいたんですか」
 
 このほかにも、加藤氏がゴルフなど私用で護衛官(SP)を使うのをいさめたら怒り出した話や朝日新聞に極秘情報を流した問題…などいろんな実例が紹介されている。
 
 中でもあきれるのは、加藤氏が毎朝、制服幹部や防衛官僚ではなく、農水省の役人の報告を真っ先に受けていたというくだりだ。
 
佐々氏はこう書いている。
 
 「加藤防衛庁長官にとっては、国防・安全保障よりも山形の米の問題などが優先順位として高かった」
 
 さらに佐々氏らが憤慨していたのは、加藤氏が朝一番に秘書官に聞くことが「円とドルの交換比率」であり、防衛庁のトップでありながらドル買い、ドル預金をしていたことだった。
 
 これについて佐々氏に直接確かめると、いまだに憤っていた。佐々氏は言う。
 
 「『有事のドル買い』という言葉もあり、戦争があるとドルが上がる。言葉ひとつで為替レートすら動きかねない防衛庁長官の立場にある者が自らドル買いをするのは、倫理に反すると感じていた。
 
彼は防衛庁・自衛隊を(身分の低い)『地下人(じげびと)』扱いしていた」
 
 そんな加藤氏は今年5月、共産党機関紙「しんぶん赤旗」に登場し、訳知り顔で集団的自衛権の行使容認反対論を語っていた。
 
 「集団的自衛権の議論は、やりだすと徴兵制まで行き着きかねない。なぜなら戦闘すると承知して自衛隊に入っている人ばかりではないからです」
 
 筆者は、この根拠も脈絡もよくわからない発言について5月22日付当欄「自衛隊を侮辱した加藤紘一氏」でも取り上げた。
 
そして今回、佐々氏の著書を通じ、加藤氏が現職の防衛庁長官時代から自衛隊を軽侮していたことがよく分かった。
 
 ちなみに、加藤氏が好きらしい朝日新聞は今月12日付朝刊の政治面記事中でさりげなくこう書いている。
 
 「『徴兵制』に現実性は乏しい」
 
 佐々氏は今、
 
「加藤氏は何で防衛庁長官を引き受けたんだろうねえ」
 
と振り返る。
 
来月3日の安倍晋三内閣の改造では、適材適所の人事が行われることを願いたい。
 
(政治部編集委員)

「党・軍・政」総ぐるみ攻勢かける中国に手を貸す日本の研究機関 理研の名も
 
2014.8.29 14:00  産経
 
 独立行政法人「情報通信研究機構(NICT)」は、昨年1月17日に中国科学院上海微系統研究所(SIMIT)との間で研究協力覚書に調印した。
 
相手の了解なしに提案内容を外部に漏らさない機密保持条項が付いている。
 
重点協力項目は超電導、バイオ・エレクトロニクス、テラヘルツ波(光波と電波の中間域にある電磁波)の3つだが、必要に応じて他の情報通信技術分野にも協力を広げる内容だ。
 
 テラヘルツ波はレーザー兵器に利用でき、米軍が大量破壊兵器対応などを目的に技術開発に全力を挙げている。NICTは
 
「SIMITが軍系かどうかは把握していないが、SIMITとの協力は軍事技術には一切関与していない」
 
(広報室)としている。
 
 ◆ レーザー技術開発
 
 理研は、昨年9月10日に中国科学院上海光学精密機械研究所(SIOM)との間で研究協力覚書を締結した。レーザーおよびその関連技術の開発のために「理研-SIOM連携研究室」を上海に設置する念の入れようである。
 
イメージ 1
 
 
 だが、人民解放軍系のニュース・サイト「多維新聞」は昨年9月17日付で「解放軍、反衛星兵器を開発中。
 
高密度レーザービーム大量破壊兵器で対米攻撃」と題する記事を掲載。その中で毛沢東の指示によって、レーザー兵器開発のためにSIOMが創設されたと正体を明かしている。理研は
 
「SIOMとの協力は外為法の安全保障貿易管理規則に従っている」
 
(広報室)と弁明している。
 
◆ 米政府は締め出し
 
 中国の諜報(インテリジェンス)部門は政府の国家安全部(省に相当)に属するが、工作員としての人材は共産主義青年団から供給される。党指令系統で政府、軍と同列である。
 
 さらに米情報筋によれば、華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)という中国通信機器大手の2社は、1980年代初めに最高実力者・トウ小平の指示によって生まれた情報通信関連4社の後身だ。
 
 華為技術の発表では、同社の設立は1987年で、人民解放軍工兵部隊に勤務した経歴を持つ現最高経営責任者(CEO)の任正非氏が42歳のときに、中国・深センで創業した「民間会社」だという。
 
だが、交換機中古品の行商から始まり、瞬く間に並み居る世界の通信機器の巨人たちを押しのけた同社には、資金、技術、人材を中心に党、軍、政府からの大掛かりな支援があると米側はみる。
 
米政府は政府関連の通信機器市場から締め出し、民間にも新規導入しないよう指導している。
 
 党指令のもとに軍、政府の諜報部門、さらに企業が一体となり、強大で高度な中国のサイバー戦能力。
 
「2013年には米政府所有を含めた世界中の無数のコンピューター・システムが攻撃にさらされたが、その多くが中国政府および軍による」(米国防総省による議会への2014年版「中国に関する軍事・安全保障の進展」報告書)というありさまだ。
 
米政府は業を煮やし、米連邦大陪審が5月19日、サイバースパイの容疑で、中国軍の「61398部隊」所属の5人を起訴、顔写真付きで指名手配した。
 
米原子力大手ウェスチングハウス(WH)、鉄鋼大手USスチールなど企業5社と労働組合が同部隊によるサイバー攻撃にさらされ、米産業の虎の子である原発や、太陽光パネルの重要技術が盗まれた。
 
 華為技術は今年、日本の通信インフラ市場でのシェア拡張を狙って、売り込み攻勢をかけている。同社日本法人幹部は
 
「当社のサイバー・セキュリティー技術の信頼性には定評があります」
 
と胸を張った。ソフトバンク、イー・モバイルの通信網を中心に華為技術は着々と納入実績を伸ばし、日本の大学などの有力研究者たちを深センの本社に招く一方、日本財界にも人脈を広げている。
 
 
 中国は党、軍、政府が総ぐるみで日本の情報通信産業と、技術開発の頂点から裾野まで深く入り込み、ごっそり乗っ取ろうとしているように見える。
 
(サイバー問題取材班)
 

消費増税の反動減、注意深くみる必要=麻生財務相

2014年 08月 29日 12:35 JST [東京 29日 ロイター]
 
麻生太郎財務相は29日、閣議後の会見で、消費増税の反動減は薄らぎつつあるが注意深くみる必要があると述べ、消費増税が個人消費に与える影響を注意深くみていく考えを示した。
 
今朝発表された7月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の実質消費支出は前年比5.9%減となった。
 
減少は4カ月連続。前月の同3.0%減からマイナス幅が拡大した。
 
家計調査を踏まえた消費動向について麻生財務相は、7月の悪天候の影響もあるとし、
 
「消費増税の反動減は薄らぎつつあると認識をしている」
 
としながらも、
 
「もう少し注意深くみていかなければならない」
 
と語った。
 
<来年度予算編成、成長と財政再建にらみメリハリ>
 
2015年度一般会計の概算要求がきょう締め切られる。複数の報道によると、要求総額は初めて100兆円の大台を突破し、過去最大となる見通し。
 
これに対して麻生財務相は、とりまとめ作業を詰めている段階で総額を言える段階ではないとした上で、
 
「15年度予算でやるべきは2つ。経済成長と財政再建をやっていかなければならない」
 
と述べ、予算編成作業では無駄を徹底的に排除しメリハリをつけていくとした。
 
<石破幹事長の処遇問題>
 
9月3日に行われる内閣改造で焦点の石破茂幹事長の処遇問題では、
 
「普通この時期、話題に出る人は発言しないもの。それがシンガポールで公共の電波を使ってどんどんしゃべる。珍しいなと思った」
 
と述べ、石破氏が自ら幹事長の続投を求めたことに苦言を呈した。

(吉川裕子 編集:山川薫)
 

7月の消費支出5・9%減 4カ月連続マイナス
 
(道新08/29 10:13)

 総務省が29日発表した7月の2人以上世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は28万293円となり、物価変動を除いた実質で前年同月比5・9%減と、大幅に減少した。
 
 消費税率を引き上げた4月以降、4カ月連続でマイナスになった。
 
マイナス幅は6月(3・0%減)よりも広がった。
 
 消費税率を引き上げた4月以降はマイナスが続いており、消費の戻りが鈍いことを裏付けた形だ。梅雨明けの遅れや台風の到来など天候不順も響いた。
 
 自営業などを除いたサラリーマン世帯の消費支出は3・6%減の31万1693円で、4カ月連続で減少。
 
 
 
5月の実質賃金は、前年比3.6%も下がった。newsweekjapan.jp/column/ikeda/2014/07/post-867.php
 
名目賃金(現金給与)が0.8%しか上がらなかったので、消費増税がそのまま実質賃金(名目賃金-物価上昇率)の低下になったのだ。
 
これは人手不足がいわれる割には、経済全体の労働需給はそれほどタイトになっていないことを示す。
 
要するにインフレと増税による賃下げが起こり、それが消費支出の減退をまねいているのである。
 
 
 
 もっともその責任は、よくも悪くも黒田総裁にはない。
 
彼の「異次元緩和」は、財政ファイナンスで国債の消化を助ける以外の実体経済への影響はなかった。
 
5月のエネルギー価格を除くコアコアCPI上昇率(金融政策の効果を示す)は0.2%だ。つまりデフレ脱却の原因はエネルギー価格上昇だったのだ。
 
 彼の総裁就任と同時に物価が上がったのは、偶然だった。その最大の原因は、以前のコラムでも書いたように、2009年以降、日本の交易条件(輸出物価指数/輸入物価指数)が急速に悪化したことだ。
 
イメージ 1 2000年代に新興国の旺盛な需要で、原油などのコモディティ価格が上昇した。他方、日本の輸出する電機製品などの価格は競争の激化や技術革新であまり上がらないため、輸出物価が下がって輸入物価が上がったうえ、リーマンショック以後、原油価格が2.5倍になった。おまけに民主党政権が原発を止めて燃料輸入を増やし、安倍政権が円安を促進したため、交易条件は30%も悪化した。
 
 アジアとの国際競争も激しくなり、中国の実質賃金(単位労働コスト)に日本の賃金が引き寄せられる現象が続いている。このため1990年代後半から名目賃金は1割以上も下がったが、デフレで実質賃金はそれほど下がらなかった。しかし「デフレ脱却」によって、実質賃金が大きく下がり始めたのだ。
 
 実質賃金は労働需給で決まり、労働需要は成長率で決まる。建設・外食以外の労働需要が伸びないのは、日本経済が供給力の天井を打った(潜在成長率がゼロになった)ためであり、追加緩和をしても改善できない。日銀にできることはもうないのだ。必要なのは生産性を高めて(ゼロに近づいた)潜在成長率を引き上げることであり、それは2000年代とまったく変わらない。
 
 当然のことだが、デフレは不況の結果であって原因ではないので、結果を変えても原因は変わらなかった。
 
輸入インフレで景気は悪化するが、原油価格が落ち着いてきたので、2%のインフレ目標は不可能だろう。
 
それは黒田総裁には悪いニュースかもしれないが、日本経済にはいいニュースなのだ。

【ビジネスアイコラム】
 
上海閥一掃が告げる北京の対外強硬路線
 
2014.08.28   ZakZak
 
 「ハエもトラもたたく」という習近平中国共産党総書記による汚職・腐敗取り締まりは、江沢民元総書記を頂点とする「上海閥」の幹部連に及んでいるが、それを単なる権力闘争として片づけると、中国の歴史的転換を読み間違う。
 
 習氏は、最高実力者、トウ小平氏が敷き、上海閥が継承した
 
「韜光養晦・有所作為」
 
対外基本路線を全面放棄した。
 
この8文字は、自分の能力を隠す一方で力を蓄えつつ、取るべきものを最低限とっていくという意だが、習氏は力をむき出しにして取れるべきものを最大限取っていく路線に転じたのだ。
 
 江沢民氏の子息が江派の軍長老に打ち明けた情報によると、習近平氏を2012年、党と軍のナンバーワンの座に据えた江沢民氏は
 
「中国の実力はいまだに米国にはるか及ばない」
 
とし、「韜光養晦・有所作為」原則を胡錦濤前総書記に続いて習氏も踏襲するよう求めた。習氏はこれに対し、
 
「今やわれわれの力で米国に十分対抗できるし、そうすべきだ」
 
と譲らず、2人の関係は断絶した。
 
 習氏は今年から本格的に対米柔軟派の上海閥締め出しに動き、軍上層部を強硬派で固める人事を着々と進めている。上海閥の不正行為の摘発はその目的達成の手段でもある。
 
 中国の横暴で増長した外交や軍事行動の数々。米軍偵察機に中国軍戦闘機が挑発行動を繰り返す。
 
米軍が圧倒的に技術優位なはずの「サイバー戦」で、中国は報復されてもへこたれず、盛んに攻撃を仕掛ける。
 
8月中旬には、米国最大級の病院グループ、コミュニティー・ヘルス・システムズ(CHS)が、中国からハッカー攻撃を受け、約450万人分の患者の個人情報が盗まれた。中国による対米サイバー攻撃は今や無差別だ。
 
他方では、オバマ政権からの警告を無視して衛星破壊のための実験を繰り返す。
 
江沢民氏によって取り立てられた軍幹部も生き残りのために強硬論に同調し、サイバー戦などに積極関与している。
 
 日本のビジネス界が気を付けるべきは、北京の基本路線転換は外交・軍事ばかりでなく、貿易、投資、技術など経済全般にわたることだ。
 
 最近、連日のように報じられている独占禁止法違反を理由にした対中進出企業バッシングの対象は、米マイクロソフト、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)、日本の自動車部品大手12社におよび、さらにトヨタ自動車も調査対象にされているという。
 
 中国経済を牽引してきた不動産開発投資はバブル不安で失速し、国産メーカーは生産過剰に苦しんでいる。そこで党官僚は軍の対外強硬路線に倣って経済でも排外主義に走りだしたと見るべきだろう。
 
 「政冷経熱」とか、「自由貿易協定(FTA)で中国市場を取り込む」、という日本人特有の修辞学はもはや浮世離れした幻想でしかない。
 
対中ビジネスは習路線を見据えたリアリズムに徹すべきだ。
 
(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男)

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